パイロット「コクーン」が万年筆沼の入口と言われる理由|書き味・デメリット・カクノとの違いをレビュー

筆記具は、仕事の相棒です。

書き心地のよいペンを使うと、メモを取ったり、考えを整理したりする時間が少し楽しくなります。

なかでも万年筆は、ボールペンとは違う独特の書き味が魅力です。ただ、初めて買うとなると「高い万年筆を買って使わなくなったらどうしよう」と迷う人も多いでしょう。

当サイトでも再三にわたり、万年筆をお勧めしているのですが、今回は入門機として最適な万年筆。

パイロット「コクーン」をご紹介します。

現在の希望小売価格は税込4,400円。カクノほど安くはありませんが、金属軸による程よい重量感と高級感があり、仕事でも違和感なく使えるデザインに仕上がっています。

実際、私が万年筆とインクの魅力にハマるきっかけになったのも、このコクーンでした。

結論からいえば、コクーンは次のような人に向いています。

  • 初めてでも本格的な万年筆を選びたい
  • 仕事で使える落ち着いたデザインがよい
  • 軽すぎるペンより、適度な重さがあるほうが好き
  • カートリッジだけでなく、ボトルインクも楽しみたい
  • 将来的には金ペンや吸入式万年筆にも挑戦してみたい

この記事では、コクーンの書き味やメリットだけでなく、実際に使って感じたデメリット、カクノとの違いまで率直に紹介します。

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まさに万年筆沼の入り口「パイロットコクーン」の特徴

コクーンは、パイロットが2012年に発売したエントリークラスの万年筆です。

「コクーン」という名前は、蚕の繭を意味する英語の「cocoon」に由来します。その名前どおり、全体が繭のような滑らかな曲線で構成されているのが特徴です。

発売当初は税別3,000円でしたが、現在の希望小売価格は税込4,400円となっています。

「コクーン」という名前は、蚕(かいこ)の繭のような楕円形の美しい形状から名付けられています。

早速、実際に愛用して感じたコクーンの特徴を分析していきます。

コクーンが「万年筆沼の入口」になる理由

コクーンの魅力は、単に価格が安いことではありません。

万年筆らしい書き味、金属軸の質感、ボトルインクを吸入する楽しさなど、万年筆の面白さを一通り体験できることが最大の魅力です。

コクーンのペン先は鉄ペンだが、だからこそのカリカリ感

コクーンのペン先は、金ではなくステンレス系の特殊合金です。

万年筆では金製のペン先を採用した「金ペン」が高級品として扱われます。そのため、ステンレス製のペン先には「安物」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

ただし、金ペンと鉄ペンの違いは、単純な品質の上下ではありません。

確かに、高級路線の万年筆はほとんど金ペンを採用していますが、ペリカンM200など、高級ブランドでもステンレス製ニブを採用している場合もあります。

金ペンは柔らかさや弾力を感じやすい一方、ステンレス製のペン先は硬質で安定した書き味が特徴です。筆圧やペン先の角度による線の変化が比較的少なく、細かな文字も安定して書けます。

書き味についても決して金の方が絶対的に良いというわけではなく、ステンレス製ニブにはステンレス製の良さがあります。

パイロットコクーンも例に漏れず、ステンレス製ニブの特徴を備えています。

以前の私は、この感触を「カリカリ感」と表現していました。

ただし、インクが出にくくて紙に引っかかるような不快なカリカリ感ではありません。紙の表面を軽く感じながら、細かな文字をコントロールできる硬質な書き味です。

特にF(細字)は、手帳やノートに小さな文字を書くのに向いています。

カクノと同じペン先だから書き味の基本性能が高い

実はコクーンのペン先には、パイロットの低価格万年筆「カクノ」と同系統のものが使われています。

パイロットもカクノの開発時に、「3,000円のコクーンと同じペン先を採用すること」を条件として品質を維持したと説明しています。パイロット公式の開発記事でも確認できます。

つまり、コクーンとカクノの価格差は、主にペン先の品質ではなく、軸の素材やデザイン、重量感にあります。

「同じペン先なら、安いカクノでよいのでは?」と思うかもしれません。

確かに、書く機能だけを重視するならカクノは非常に優秀です。ただ、コクーンには金属軸ならではの重みがあり、この違いが書き心地や所有感に大きく影響します。

コクーンは、カクノの優れたペン先を、大人が仕事でも使いやすい金属ボディに収めた万年筆と考えると分かりやすいでしょう。

24gの金属軸が筆記を安定させてくれる

コクーンの重量は24gです。

11gのカクノと比べると、2倍以上の重さがあります。

この程よい重量によって、強い筆圧をかけなくてもペン先を紙に置きやすく、安定して文字を書けます。

ボールペンはペン先のボールを回すために一定の筆圧が必要ですが、万年筆はインクがペン先から紙へ流れるため、ほとんど力を入れなくても筆記できます。

その感覚をつかむうえでも、コクーンの重さは悪くありません。

力を抜いて、ペン自体の重みを利用しながら書く。この書き方に慣れると、ボールペンとは違う万年筆らしい心地よさが分かってきます。

パイロットらしい潤沢なインクフロー

パイロットの万年筆は、比較的安定したインクフローに定評があります。

一般に細字の万年筆は、中字よりもインクの流れる量が少なくなるため、ペン先の乾燥やインクとの相性によっては書き出しがかすれることがあります。

しかし、私が購入したコクーンのFでは、インクフローに不満を感じることはほとんどありませんでした。

細かな文字を書ける一方で、必要な量のインクがきちんと供給されるため、硬質なペン先でありながら書き味は滑らかです。

もちろん、書き味は使用するインクや紙、ペン先の個体差によって変わります。

私の場合は、パイロットのボトルインク「色彩雫」と組み合わせることで、コクーンの滑らかな書き味を楽しめました。

コンバーターならインク吸入も楽しめる

コクーンは、パイロットのインクカートリッジとコンバーターの両方に対応しています。

初めて万年筆を使う場合は、まずカートリッジを差して使うのが簡単です。

さらに万年筆に慣れてきたら、別売りのコンバーター「CON-40」を装着することで、ボトルインクを吸入できるようになります。

このインク吸入が、万年筆沼への大きな入口です。

ボトルインクには、ブラックやブルーだけでなく、深みのある青、赤みがかった茶色、鮮やかな緑など、数え切れないほどの色があります。

紙や光の当たり方によって濃淡が変わるインクもあり、同じペンでもインクを変えるだけで印象が大きく変わります。

私はコクーンを購入したあと、パイロットの「色彩雫」を使い始め、万年筆だけでなくインクそのものにもハマってしまいました。

コクーンは書くための道具であると同時に、インクを楽しむための入口でもあります。

コクーンとカクノの違い

初めてパイロットの万年筆を購入するとき、コクーンとカクノのどちらを選ぶか迷う人は多いと思います。

主な違いを整理すると、次のようになります。

比較項目コクーンカクノ
希望小売価格4,400円1,100円
ペン先ステンレス系特殊合金ステンレス系特殊合金
字幅F・MEF・F・M
軸・キャップ黄銅樹脂
重量24g11g
全長138mm131mm
対応コンバーターCON-40CON-40・CON-70N
デザイン落ち着いたビジネス向けカジュアルで親しみやすい

書き味の基本となるペン先は同系統ですが、持ったときの感覚はかなり違います。

カクノは軽く、グリップも持ち方を自然に整えやすい形状です。とにかく安く万年筆を試してみたい人や、長時間軽快に書きたい人に向いています。

一方のコクーンは、金属軸による重さと質感が魅力です。

仕事の打ち合わせや商談で使っても違和感がなく、「万年筆らしい所有感」まで含めて楽しめます。

軽さと価格を優先するならカクノ、重みと高級感を求めるならコクーンという選び方でよいでしょう。

パイロットコクーンのデメリット

コクーンは完成度の高い入門用万年筆ですが、使う人によっては気になる部分もあります。

購入前に知っておきたいデメリットも率直に紹介します。

軽いペンが好きな人には重く感じる

コクーンの24gという重量は、筆記を安定させてくれる一方、軽い筆記具に慣れている人には重く感じる可能性があります。

特にキャップを軸の後ろに装着して書く場合は、重量バランスが後ろに寄りやすくなります。

短時間のメモや署名では気にならなくても、勉強や長文の筆記で何時間も使う場合は、軽量なカクノやライティブのほうが楽に感じる人もいるでしょう。

筆記具の重さには好みがあるため、可能であれば店頭で一度持ってみることをおすすめします。

金属軸が冬場に冷たく感じる

コクーンの魅力のひとつが、金属軸の質感です。

滑らかな曲線と落ち着いた塗装には高級感があり、実売価格以上の存在感があります。

一方で、金属軸ならではの弱点もあります。

それが、冬場に感じるひんやりとした触感です。

短時間であればそれほど気になりませんが、寒い部屋で長時間筆記していると、軸の冷たさが手に伝わってきます。

私はこの冷たさが、少し書き疲れにつながることもありました。

字幅がFとMしかない

コクーンで選べる字幅はF(細字)とM(中字)の2種類です。

日本語の手帳や小さなノートに細かな文字を書くならF、インクの濃淡を楽しんだり、少し大きめの文字を書いたりするならMが向いています。

ただし、コクーンにはカクノに用意されているEF(極細字)がありません。

手帳の狭いスペースにかなり小さな文字を書きたい人は、カクノのEFや、別のパイロット製万年筆も候補になります。

CON-40は吸入できるインク量が多くない

コクーンに対応するコンバーターはCON-40です。

ボトルインクを楽しめる点は大きな魅力ですが、一度に吸入できる量はそれほど多くありません。

たくさん文字を書く人の場合、インクを補充する頻度が高くなる可能性があります。

また、コンバーターは別売りなので、最初からボトルインクを使いたい場合は本体以外の費用も必要です。

実用性だけを優先するなら、容量の大きいカートリッジを使用したほうが手軽です。

一方で、インクを頻繁に交換していろいろな色を試したい人にとっては、容量の少なさが必ずしも欠点になるとは限りません。

よい万年筆を買うと使わなくなる

これは製品の欠点というより、入門機として優秀なコクーンの宿命かもしれません。

コクーンで万年筆の魅力を知ると、次は金ペンや吸入式万年筆が欲しくなります。

私もコクーンをきっかけに万年筆とインクの魅力にハマり、その後、ペリカンの「スーベレーンM400」やパイロットの「カスタムヘリテイジ92」を購入しました。

その結果、コクーンを数年単位で放置してしまい、コンバーターの中でインクが固まってしまったことがあります。

久しぶりに使おうとしたときには、まず洗浄から始めなければなりませんでした。

パイロットも、長期間使用しない場合はインクを抜き、内部を洗ってから保管するよう案内しています。万年筆は定期的に使うこと自体が、最も簡単なお手入れでもあります。

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