皆さんは仕事の際、どんな整髪料を使っていますか?
私は毛量が多い割に毛が乾燥しやすく膨らみやすい性質を持った毛質であるため、ウェットなワックスではうまくスタイリングできず、細かなデザインも難しいという悩みを持っていました。
そんな私がたどり着いたのは、ヘアリキッドです。
ヘアリキッドは、ガチガチに固めたり、ねじったりするのではなく、ドライヤーで作った原型を極力保ちながらさらっとソフトにまとめ、配合された油脂で髪に潤いも与えるという、パサパサ髪の人には大変頼もしい整髪料です。
しかし、ヘアリキッドは「おじさんが使う整髪料」で匂いがキツイんじゃないかとお思いの方も多いでしょう。
その認識……ほぼ正解です。
実際、ヘアリキッドのほとんどは香料を使用しており、さらにエタノールを使用しているため揮発性も高いことから、昔ながらの香水のような香りが立ち上るものも多いです。
そんな「おじさん系」とも揶揄される香り系ヘアリキッドの中でも特に定番なのが、資生堂の高級男性用整髪料「アウスレーゼ」です。
アウスレーゼには、緑のアウスレーゼと青のアウスレーゼトロッケンという色違いが存在しますが、今回は日常的に両方のアウスレーゼを使用している私(30代)がその違いを実際に嗅いで解説したいと思います。
資生堂「アウスレーゼ」とは?
まずは、アウスレーゼを知らない人のためにおさらいです。
アウスレーゼとは、資生堂が1980年から発売している大ロングセラー男性用化粧品ブランドです。
資生堂はアウスレーゼブランドとして、ヘアリキッドを中心とした整髪料各種や育毛トニック、アフターシェーブローションなど男性に特化した商品を展開しています。
アウスレーゼ誕生の背景と「おじさんくさい」と呼ばれる理由
ここで少し時間をさかのぼり、アウスレーゼ登場以前のトレンドからブランド誕生背景とおじさんと呼ばれる理由を紐解いていきましょう。
1960年代以前は男性向け整髪料と言えばポマードやヘアクリームを使用したカッチリしたヘアスタイルが人気でした。この頃の代表的な俳優と言えば、三船敏郎ですね。
そして、70年代には草刈正雄や団次郎のような、サラサラヘアの爽やかなスポーツマンが人気を博し、マンダム、MG5、ブラバスなど、自然なツヤでボリューム感が出せるヘアリキッドが人気を獲得します。
この時代に特に人気だったのは、ムスク系と分類される香りの強いヘアリキッドで、強めの香りが男らしさや清潔感を演出すると好評でした。
しかし、1980年頃になると整髪料の強すぎる香りが毛嫌いされる傾向が出てきました。
そこに登場したのが「微香性」を謳ったアウスレーゼ(緑)です。
従来のヘアリキッドより少し香りを抑えた「微香性」のちょうど良さが時代を掴み、男性整髪料の代名詞として長く人気を獲得するに至ります。
そして、アウスレーゼ20周年に当たる2000年に登場したのが新機軸「アウスレーゼトロッケン(青)」です。
1990年以降、無香料のトニックや香り控えめのワックスが流行し、以前のフローラル系の香りがいかにも60年代風で「おじさん臭い」と毛嫌いされ始めた時代に、「フローラル由来の甘さ」を抑えたドライな香りが大人っぽく、またもちょうど良い香りとして受け入れられたことで、アウスレーゼブランドの存続に一役買いました。
アウスレーゼ(緑)とアウスレーゼトロッケン(青)の違いとは?
では、アウスレーゼ(緑)とアウスレーゼトロッケン(青)の違いをレビューしていきましょう。
まず、アウスレーゼとアウスレーゼトロッケンのヘアリキッドに整髪力の違いはありません。
アウスレーゼのヘアリキッドは他の整髪料と違って、ガチガチに固めたり、デザインしたりには向きませんが、ドライヤーで整えただけのようなふんわりとした自然な仕上がりと適度にツヤを与える効果があるため、パサパサ系の髪質の人にオススメです。また、細かいデザインを施す時間がもったいない人などには、時短にもなると好評を博しています。
では、アウスレーゼとアウスレーゼトロッケンの違いは何か?と言えば一言、「香り」だけです。
では、その違いを実際に嗅いでレビューしていきたいと思います。
アウスレーゼヘアリキッド(緑)の香りレビュー
アウスレーゼは裏面の表記上は「フローラルシトラスの香り」となっています。
実際に嗅ぐと、確かに最初に熟したみかんのような柑橘系の香りが漂い、後から花の香りに変わっていきます。
個人的には後者の花っぽい香りが強く長いように感じます。
他社製品と比較すると、ライオンのバイタリスなどはフローラル感がほぼないシトラスのみの香りとなっていますが、アウスレーゼは完熟のシトラス感のすぐ後から花屋のような香りが追いかけてきます。
その二つの香りが織り交ざって、甘いフレグランスを漂わせるのです。
その匂いを的確に表現するとすれば、「お歳暮で送られてきた透明な高級固形石鹸の香り」と言うとかなり正確だと思います。
人によってはこの「透明な高級固形石鹸の香り」が、「おじいちゃんのジャケットの香り」や「実家の洗面所の香り」、「町の床屋の香り」などを連想させるのかもしれません。
それは、「透明な高級固形石鹸の香り」が引き起こす原体験のフラッシュバックでしょう。
つけた瞬間はさほど気になりませんが、残り香の固形石鹸感によっておじさん臭さを感じてしまうのは確かに否めないと思います。
アウスレーゼトロッケン(青)の香りをレビュー
アウスレーゼ(緑)が町の床屋を感じさせる「フローラル系の高級固形石鹸の匂い」だったのに対し、アウスレーゼトロッケンは「薬用酒の香り」と表現できると思います。
アウスレーゼトロッケンには柑橘や花の香りは無く、揮発しても甘ったるい感じは残りません。そこがトロッケンの最大のポイントになっています。
その香りを表現するならば生薬やハーブ、もしくは夏の牧草をイメージしたようなドライな香りです。
そこにエタノール由来の揮発性が加わるため、薬用のハーブ酒やスパイシーなジンのような洋酒風の香りに変化していきます。
甘さや石鹸感がないため、より大人の雰囲気を感じる香りだと思います。
正直、床屋感やおじさん感が無いわけではないですが、町の床屋というより、美容室でつけてもらえる「業者専売ヘアトニックの香り」と言う感じで、嗅ぎ覚えがある懐かしい感覚というよりは美容室の帰り道にかすかに漂う香りと言う感じです。
アウスレーゼ(緑)とアウスレーゼトロッケン(青)のどちらがおじさんくさいのか?
正直、アウスレーゼ(緑)もアウスレーゼトロッケン(青)もエタノールの揮発性の高さから、つけた瞬間のむせるような香りの立ち上がりがあり、どうしても床屋感は出てしまいますが、アウスレーゼ(緑)の方がかなりの懐かしさを感じる「高級固形石鹸の香り」であり、それが「おじさんくささ」や「町の床屋」の記憶と結びつくのではないかと思います。
一方、アウスレーゼトロッケン(青)は、エタノールの揮発性の高さからくる床屋感こそ同じであるものの、床屋の中でも比較的オシャレなお店で付けてもらえる「業者専売トニックの香り」であり、高級感はトロッケンの方が数段上だと感じます。
おじさんで例えるならば、
「アウスレーゼ=親戚のおじさん」
「アウスレーゼトロッケン=銀座のシャレおじ」
と言う感じかと。
個人的には断然アウスレーゼトロッケン(青)がおすすめです。
しかし、初代であるアウスレーゼ(緑)には2000年登場のトロッケンとは比べ物にならないほどの根強いファンがおり、この香りがたまらないという人も多いことは実際に使ってみて理解することが出来ました。
初めてのアウスレーゼにチャレンジする方は、まずアウスレーゼトロッケン(青)から始めてもらって、その立ち上がる香りを体感してもらい、興味がわいたら初代アウスレーゼ(緑)も手に取ってみるという感じが宜しいのではないかと思います。