皆さんはイヤホンを選ぶときにどんな基準で選びますか?
私は何といってもコスパを最も重視して、値段の割に高い音質の商品を徹底的に調べ上げて購入するタイプなのですが、つい先日、何も考えずに衝動的に購入してしまったワイヤレスイヤホンがありました。
それが、「NAGAOKA(ナガオカ)BT826-BK」です。
日本の知る人ぞ知るオーディオアクセサリメーカー株式会社ナガオカが今年2021年にリリースした、異常な安さと異常なスペックを両立した注目すべきイヤホンです。
今回は、衝動的に安物買いに走ってしまったワイヤレスイヤホンの音質やデザイン、本当の使い勝手について、分析的な視点でレビューしていきたいと思います。
株式会社ナガオカとは|世界のナガオカの隆盛と没落の歴史
株式会社ナガオカはレコード針の世界シェアで90%を誇る日本の精密加工メーカーです。
ナガオカの前身となる旧株式会社ナガオカは1940年に創業。高硬度難削材(人造ルビー等)が使われる時計の軸受け石の加工を手掛け、業容を拡大。1969年には主力工場として山形ナガオカ株式会社(現株式会社ナガオカ)が分社設立されました。
旧ナガオカは早くから家庭向けのレコードの普及に目を付け、戦後間もない1947年頃、時計部品製造で得た宝石加工技術を用いたサファイア蓄針(レコード針)の製造に着手。その後、読み通りに高度経済成長の波に乗ってレコード針の生産が本格化したことで急成長。一時は月産100万本も達成し、世界シェアの90%をナガオカが占めるほどに成長。「音のナガオカ」「世界のナガオカ」の名をほしいままにしました。
しかし、1980年中頃から家庭向けにCDが普及し始めたことで業績が急落。レコード針が全く売れなくなったため、イヤホンやCDクリーニングキットなどのオーディオアクセサリの製造に軸足を移したものの業績悪化に歯止めはかからず、旧株式会社ナガオカは1990年にあえなく自主廃業。自主廃業による事業整理に伴い、営業・流通部門の株式会社ナガオカトレーディング、製造部門山形ナガオカ株式会社(現・ナガオカ)、機械加工請負の株式会社ナガオカ精密に分散整理されることとなりました。
分散後は、難削材加工の受託などでなんとか経営を立て直し、音響業界でも好評価を維持。廉価なのに専門家をもうならせる音質の高コスパイヤホンを生産しています。そして、1999年に山形ナガオカは元の社名である「株式会社ナガオカ」に改称し、ナガオカ復権への道を歩み出しています。
ナガオカ(NAGAOKA)のイヤホン全般の評判は?
ナガオカのイヤホンはとにかく安い!高コスパ!というのが定評です。
ナガオカのイヤホンのほとんどが5000円以下であり、主に1000円~2000円を主戦場としていることから「安かろう悪かろう」という気持ちで買ったユーザーの期待を“ちょうど良く裏切る”商品ラインナップとなっています。
つまり、「この値段でこの音質、この機能なら悪くない、むしろアリ」というラインを狙いに行っているのです。
その証拠に、ナガオカのイヤホンは値段の割に性能面が高い商品が多く、今回ご紹介する「BT826」などは業界でも最長クラスの24時間連続再生の超大容量バッテリーを備え、IPX4クラスの防水性能を持っている(参考:オーディオテクニカ「ATH-CKS660XBT」はIPX2相当)のに、価格が2000円という価格破壊レベルの商品となっています。
異常なスペック!ナガオカのワイヤレスイヤホン「BT826」
今回衝動買いしてしまったNAGAOKA BT826は、Bluetooth接続に対応した、ネックバンドタイプのカナル型ワイヤレスイヤホンです。
私はイヤホンを片耳だけ外して会話したり、テレビの音を聞いたりすることが多いので、完全ワイヤレス型よりネックバンド型の方が好きなんですよね。
本製品の特徴は、なんといっても大容量のバッテリーです。最大24時間のという業界最長クラスの長時間再生が可能で、一日中デスクワークで音楽を聞いても問題ないというのが最大の強みです。
もちろんマイクも搭載しているためWEB会議でも使えます。
ボタンも防水仕様の製品にありがちなラバータイプではなく、プラスチックのボタン式になっていて耐久力と押し応えがしっかりしているのも重要ポイントだと思います。
ナガオカのワイヤレスイヤホン「BT826」の音質レビュー
では、まず音質をレビューしていきましょう。
音質は、いわゆるドンシャリ系に分類される音ですが、低音が比較的弱めでパンチは少ないです。
一方で高音はかなり細かな音まで再現してくれる印象で、全体的にはやや高音寄りの音配置となっています。
人によっては若干高音が刺さる感じすらあるかもしれませんので、気になる場合はイコライザーなどで調整するしかありませんね。
上で書いた通り音質的には重低音ガチ勢には向かない音質だと思われますが、低音域の圧が少なめな分、聞き疲れがこないので日常的に長時間装用する人にはむしろ良いのではないでしょうか。
また、中音域から高音域がかなり聞き取りやすいため、ラジオやボイスコンテンツ、WEB会議で使用にはかなり向いていると思います。長時間バッテリーの安心感も会議利用には向いていますね。
遮音性、密閉性は構造的に低めの設計となっているようですので、街中でも低音の効いた音楽を求めている場合には、イヤーピースをウレタン製に変更するなどの工夫が必要だと思われます。
一方で、密閉性が高すぎると耳が痛くなるタイプの方(私もそうです)には本品くらいのやや開放気味の密閉感くらいがちょうど良いのではないでしょうか。
私の愛用している他のイヤホンだと、オーディオテクニカ「ソリッドベース」やZEROオーディオ「カルボバッソ」などは密閉性がかなり高めで屋外でも音質が安定する分、長時間の使用で耳を傷めてしまうことがあるので、ここら辺は完全に好みの域ですが、在宅ワーク中の音楽鑑賞であれば「BT826」くらいの開放具合がちょうど良いです。
私は、屋外ではオーディオテクニカ「ATH-CKS660XBT」、家ではナガオカの「BT826」という使い分けをしています。
ナガオカのワイヤレスイヤホン「BT826」のデザイン・使い勝手評価
デザインについては、個人的には”愛すべきクソダサ感”だと思います。
まず、ネックバンドに配された「NAGAOKA」のロゴがダサいですねw
しかし、正直なところこのロゴのダサさが逆に私の購入の決め手になりました。このロゴを見た瞬間に、「あえてNAGAOKAを使っているんだ」っていうのが逆にカッコいいんじゃないかと思ってしまったんですよね。
イヤー部分は小型で軽量なので、耳へのおさまりが良くファッション的にも主張しすぎないところは良いと思います。
高音質や重低音を謳うイヤホンにありがちなのですが、イヤー部分が大きすぎてかえって耳への負担が増えたり、聞いている途中で落下してしまったりと聞き手のストレスになることもあるため、小型軽量の設計は個人的にすごくうれしいです。
また、ネックバンドはきちんと形状維持性の高い樹脂を使用しており、安定感が高いです。
ソニーのWI-C200のようなふにゃふにゃ型だと、重心が後方に流れがちでクビが凝ってしまうことがあるため、これくらい硬質の方が安心感があります。
ちなみに、もっと固いものだとスカルキャンディのネックバンド型も固めでオススメです。
そして何より、連続再生24時間の安心感ですね。
私はほぼ終日在宅勤務で会議が無ければずっと音楽を聴きながらデスクワークをしているので、この長寿命は本当に助かります。
ナガオカ(NAGAOKA)「BT826」のダメなところ
逆に大きく減点だと感じているのはボタン周りですね。
ラバーボタンじゃないため操作はしやすいのですが、プラスチック筐体のためカチャカチャとボタン音がするためとても安っぽい印象を与えてしまいます。もう少しパーツのマージンを減らした丁寧な組み立てをしてもらえるともっといいのになというところです。
また、コードが本体横から出る形状になっているのですが、携帯した際にこの部分が突起のような感じになってしまうため邪魔になりますし、断線の懸念がどうしてもぬぐえません。
他社の製品のように本体の上、もしくは下から出るような形状にしてもらえるともっと良いのではないかと思います。
総合評価:星3つ|音の好みは分かれるが、エイジングが楽しみなイヤホン
総合評点としては、星3つとさせていただきます。
まず、24時間という圧倒的な長寿命バッテリーをもったワイヤレスで2000円というのは破格ですね。
業界の色々な方面に恨まれるのではないでしょうか?
一方、音質は正直好みが分かれます。
ラジオや会議などボイス中心で使う人や、低音よりも音のバランス重視の方にはちょうど良いと思いますが、重低音以外に認められないという方には絶対に向きません。
私もこれまで重低音型のイヤホンに慣れていたため、最初に聞いた時には高音の鳴りと抑え目な低音のバランスにスカスカ感を禁じえませんでしたが、しばらく使ってエイジングが進んだらだいぶ落ち着いてきて、今では低音偏重よりナガオカくらいのバランスの方が心地よく感じられるようになりました。
ある意味、育てる楽しさのあるイヤホンと言えるかもしれません。
ナガオカのブランドが好きで応援したい方、ラジオやボイス中心に使う方、聞き疲れしないイヤホンが欲しい方、日常的に長時間装用する方にはコスパも含めて最適なイヤホンだと言えます。
音質・デザインに好みが分かれるという点から、星は3つと少し厳しめにつけましたが、エイジングや自分の慣れも含めて今後の成長が楽しみなイヤホンだと思います。
興味を持った方は2000円と安価ですので、是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか?